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Vol.10  くすのきのおやじ

その連絡が来たのは、夕べのことでした。

「なにっ? くすのきのおやじが倒れた? どういうこと!?」

二酸化炭素君はその連絡を受けて気が動転してしまいました。
そんなことがあるはずない、これは嘘だ、悪夢だ、信じるものか・・
二酸化炭素君は自分に言い聞かせました。

しかし、その連絡は、生き別れた兄、一郎からのものでした。
兄が嘘を言うはずがないし、ましてくすのきのおやじのこと、
兄を信じるしかありませんでした。

「兄ちゃん、いまどこ? うん。うん。
わかった。ぼくもすぐに向かうよ。兄ちゃん、そこにいてよ。
待っててよ!」

二酸化炭素君は、とるものもとりあえず、急いで例の丘に向かいました。

二酸化炭素君の胸には、小さい頃遊んだ美しい丘と、そこに住む物質たち、
そして、丘にそびえる大きなくすのきのおやじの姿がよみがえっていました。

花が咲き、明るい日差しに照らされた緑豊かな丘の上の小さな林。
やさしい笑顔で二酸化炭素君を見守かえでシスターズやくぬぎの若旦那。
凛としたくすのきのおやじのまわりには、風にそよそよとゆられながら、
二酸化炭素の仲間が我先にと、葉の中へと入り込もうとしています。
そんな二酸化炭素たちに、やさしく語りかけていたくすのきのおやじ。

「そんなことがあっていいわけない・・・」

そうつぶやきながら、二酸化炭素君は道を急いだのでした。

<つづく>
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# by mokuiku | 2011-05-28 19:14 | 二酸化炭素君

Vol.9  ふるさと

(この回は古今亭 志ん輔師匠の語りをイメージしながらお読みください。)

「おやじさん、ちっちゃいとき、何になりたかった?
ん? 俺かい? おりゃあ、そう、あったよ。なりたかったもの。
みんなあるだろ?
そうそうそうそう、夢ってやつだよな。
俺のまわりのやつらはよ、そりゃあ、いろんなこと言ってたよ。
『わたしお花になりたい』だの、『空の雲になりたい』だのさ。
ああ、子供の夢ってなかわいいよね。罪がなくてさ。
『あたし水になりたいっ』て強情はってたやつまでいてさ。
みんな無理だっていうんだけど、泣いちゃってね、そのこさ。
最後は『願えばかなわないことはないっ』て、
先生が励ましてようやく泣き止んだけど、大変だったよ。だだこねて。
それでもさ、今考えれば先生も罪なことするよね。
え? いい話じゃないかって?
なれるもんと、なれないもん、それは教えなきゃ。
いやいやいや。無理無理無理、なれないでしょ。
なんてったって、俺ら(注)水素一つももってねえんだから。

それでも中にゃ、人間になりたいとか言ってたのもいやがってよ。
気が知れねぇったらありゃしねえ。
ぞっとするよ。そうだろ?」

二酸化炭素君、今日はなんだか饒舌です。

「ん? どこの生まれかって?
おやじさんはどこだい? へえ、そりゃまた遠くから。
あの辺だと、冬も厳しいだろうねえ・・。
でもさ、うまいモンも多いし、土地柄としては申し分ないよね。
ん? 何でわかるかって? 
そりゃ、人柄をみれば土地柄がわかるってなもんで、
おやじさんみてりゃ、だいたいわかるよね。」

つまみを口にいれ、きゅっと気持ちよさげに一杯のどに流して、
二酸化炭素君はまた調子よく話を続けます。

「この窓から見えるあの光の向こう、そうそう、あそこ。
あそこなんだかわかるかい? ん? 夜だから見えない?
もともと鳥目だからわかんないって?
そんなこといってんじゃないんだよ。
ビタミンとろうよ。ビタミン。
英語じゃヴァイタミンって発音すんだぜ? 知ってたかい?」

このまま独演会になりそうな、そんな二酸化炭素君でしたが、

「西日が照らす時間に、あの辺に丘があるのみたことないかい?
そう、そうだよ。あの丘の上。森があんだろうよ。
あれ。」

と、そこまで言ったとき、急に寂しそうな顔でぽつりといいました。

「あれ、おれのふるさとなんだよ。俺が生まれたところ。
ずっと昔にあそこを追い出されてさ・・・。
今日、ここに至るってかんじだよ・・。」

ぐいっと飲んで、うつむいて続けます。

「俺はあそこで、なりたかったものがあったんだよ。
心底ね・・・。
今からでも願えば思いはかなうって? 
そうだなあ・・・。そうかもしれないなあ・・。
そうだったらいいのにねえ・・。」

そういうと、急に西側の窓を向いて、
二酸化炭素君は黙り込んでしまいました。

「たまには帰ってみるかねえ・・・。」

少しだけの沈黙のあと、そう言い残して、
二酸化炭素君は店を出ました。


注)俺ら=二酸化炭素
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# by mokuiku | 2011-05-14 17:58 | 二酸化炭素君

Vol. 8

「兄ちゃん、俺やっぱりだめだ・・。堪えられないよ・・」

今日も二酸化炭素君はぐだぐだです。

「結局、光合成なんて誰もわかってくれないんだ。
今日も学校でさ、先生が子どもに教えてるんだよ。
『森の植物たちには、汚れた空気をきれいにする働きがあります。
植物は二酸化炭素をすって、酸素を出しているのです』・・だってよ。」

ぐだぐだは止まりません。

「空気をきれいに? って何かい?。俺たちゃ汚い? 
それじゃなにかい、そういう汚れを食ってる(注)
草や木は汚いってことかい? ありえねー!
おやじ、もう一杯!」

おやじさんは、笑顔を絶やすことなくそっとついであげます。

「おやじさんだけだよ。俺の気持ちわかってくれるの。
ほんとだよ、ホント。」

泣きながら二酸化炭素君は続けます。

「・・炭素ってさ、別に黒いわけじゃないっつーの。それは炭っ。
黒いって、みたことあんのかよっ、ての。
俺は別に腹黒いわけじゃねっての。
花が咲くのも、緑が美しいのも
海がきれいなのも、
コーラがうまいのも・・
みんな俺たちのおかげなんだよっ
わかってんのか、みんなよぉ。
なんでわかってくれないんだよ・・・。」

「二郎泣くな。泣いたら負けだぞ。」

やさしくなつかしいその声に、二酸化炭素君はおもわずあたりを見回しました。
でも、誰もそこにはいませんでした。

「兄ちゃん、どこにいるんだよ・・。会いたいよ・・。」

二酸化炭素君は今日も酔いつぶれてしまいました。



注)二酸化炭素的には植物に食べられているという意識。
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# by mokuiku | 2011-05-13 23:42 | 二酸化炭素君

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