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Vol.7 鉄ちゃん

「鉄ちゃん、鉄ちゃんじゃないか!」

二酸化炭素君が街を歩いていると、懐かしい出会いがありました。

「二郎じゃないか? あれからどうしてた? 元気だったか?」

彼は炭素鋼の鉄太郎、やんちゃで、けんかっ早い(注1)けど、みんなの人気者。
通称鉄ちゃんです。

「鉄ちゃんも、元気そうだね。それにしても、その傷はどうしたの?」

「いや、さっきそこで調子に乗ってる酸素軍団をみかけてな、
ちょっと締めてやったんだよ。がはは。」

鉄ちゃんの背中には赤い返り血(注2)がついています

「ほどほどにしないと、いくら鉄ちゃんでも
身体ぼろぼろになっちゃうよ・・。」

「なに、俺のことは心配すんな。こうでもしないと、酸素の野郎の本性は
暴けないからな。ま、ほどほどにやってくよ。がはは」

二酸化炭素君は陽気な笑い声に少しほっとしました。

「・・・関係ないけど、一郎兄ちゃんのこと、鉄ちゃん、なにか聞いてない?」

「なんだ、一郎のやつ、まだ帰ってきてないのか・・」

「鉄ちゃん、何か知ってるの? 知ってるんでしょ? ねえ、教えてよ。」

鉄ちゃんは、困った顔で、しばらく口を開きませんでしたが、
ひとつ、大きく呼吸して、ゆっくりと話はじめました。

「なあ、二郎、人にはいろんな悩みがある。そしてその悩みは、
仲のいい友達、兄弟でもいえないことがある。
おまえと一郎は、一緒に育った、そりゃ仲のいい兄弟だ。
でもな、そういうお前にも話せないこともたくさんあるんだと思う。
今は、あいつのことはそっとしておくことだと思うよ。
あいつなら大丈夫だ。
そのうち元気に帰ってくるよ。」

「鉄ちゃん、そんな話聞きたいんじゃない!
今、兄ちゃんはどうしてるの? 元気なの? 最近会ったんでしょ?
どこにいるの? 教えてよ!」

二酸化炭素君は涙をこらえて鉄ちゃんに頼みました。でも、
鉄ちゃんは、首を横にふるばかりです。

「あいつには、あいつの思いがある。
それをわかってやってくれ。
あいつは自分の人生をしっかりと熱く、燃え尽きたいんだ。
なあ、二郎・・・。
わかってやってくれ・・・。」

そういうと、鉄ちゃんは悲しそうな横顔を残して、去っていきました。
夕日が照らす鉄ちゃんの輝きも、少し寂しげに感じられました(注3)。



注1)イオン化傾向が強い
注2)表面が酸化鉄(Ⅲ)に変わっている。
注3)結構錆がまわっているため。
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# by mokuiku | 2011-05-12 15:46 | 二酸化炭素君

vol.6  物質たちの悲哀

二酸化炭素君は今日も酔いつぶれています。

「お客さん、そろそろ看板だよ。」

おやじさんの声に、二酸化炭素君はむくっと起き上がりました。

「ここおいとくよ。・・・またくるよ」

建て付けの悪い引き戸を開けて、二酸化炭素君はふらふらと出て行きます。
街はまだ十分にぎやかで、二酸化炭素君にはまぶしすぎる感じです。

「こんな無駄な明かりが温暖化につながるってんだよ。
文句言う前に省エネなりなんなりしろってんだ。
政府も電力消費量のキャップ制とか、実効性のある方策を・・・
ったく、声だけじゃどうにも・・・」

ぶつぶついいながら、ゴミ置き場の前まで来たとき、二酸化炭素君は
気分が悪くなって、その場にしゃがみ込んでしまいました。

どれくらいの時間がたったのかわかりません。
でも、二酸化炭素君は、近くで何かがうごめく音で目を覚ましました。
そして薄暗い中で、目をこらして見た光景を、
二酸化炭素君はその後長く忘れられませんでした。

そこには、薄汚れた服装で、泥まみれになりながら、ゴミの山の中で、
一生懸命何かを探す二酸化マンガン君がいたのです。
いつものおしゃれで、つんとすました二酸化マンガン君から
あまりにもかけ離れたその姿に、二酸化炭素君は声を失いました。

一方、ようやく二酸化炭素君に気づいた二酸化マンガン君は、
驚き、取り繕うかのように叫びました。

「や、やあ、二酸化炭素君!」

二酸化マンガン君は急に何かに気づいたように、手に持っていたものを
あわてて後ろに隠しながら言いました。

「違うんだ。誤解しないでほしいんだ。僕は清掃のボランティアをやってて。
そう、ボランティア。ボランティアなんだよ・・・」

二酸化マンガン君がそういって、逃げるように後ろを振り向いたとたん、
持っていたカバンの中から何かがばらばらとこぼれ落ちました。

それは、使い捨てられた、たくさんのマンガン乾電池だったのです。

「違うんだ・・・。僕はただ、みんなに分別収集を・・。再利用してほしくて・・」

二酸化炭素君は以前聞いた、おじぃの話を思い出しました。


『・・・二郎、なにも二酸化マンガンなんてうらやむ必要はねえぞ。
知ってるか? 乾電池に使われる二酸化マンガンの運命。
同じように乾電池に使われる鉄や亜鉛なんてやつらは再利用されても、
二酸化マンガンは資源的な価値が低いっていう、てめえ勝手な理由で
たくさん廃棄されているんだぜ。つめてえもんだよ。
二郎、覚えときな。物質とか材料ってのは、役に立つ間だけちやほやされるが、
そうでなくなったらただの厄介者なんだよ・・・。』



「二酸化マンガン君・・・」

「このことはみんなには内緒にしてくれないか・・」

悲しそうな声でそういうと、二酸化マンガン君は街の闇の中にそっと消えていきました。

二酸化炭素君は、材料として使われる者の光と影を見た気がしました。
何が正しくて、何が間違っているのか、わからなくなりました。

「・・・チェッコリッサ、ニサンカマンガン、サッサマンガン、ホンマンチェチェ♪」

そう口ずさみながら空を見上げると、あたりはもう少しずつ明るく、
星が一つずつ消えていこうとしていました。

「結局、歌詞の意味がわからない・・」

二酸化炭素君はぽつりとつぶやくと、ゆっくりと歩きはじめました。
今夜は、少しだけ二酸化マンガン君の心をのぞいた気がしました。
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# by mokuiku | 2011-05-09 11:52 | 二酸化炭素君

vol. 5 おじぃ。

「おじぃ? おじぃじゃないか?!」

今日の店には珍しいお客さんです。
二酸化炭素君が声をかけたのは二酸化炭素の長老、通称おじぃです。

「おお、おまえさんは・・・、えーと、たしか・・・」





(おじぃがフリーズしましたので3分お待ちください。)







じれた二酸化炭素君がつい声をかけます。

「ほら、・・・裏山のクスノキのおやじのところの・・」

「ああ、そうじゃ! 名前は確か・・・イボ二郎!」

「・・・いや、二郎だよ、おじぃ・・。イボ二郎って・・」

「ああ、そうじゃった痔瘻じゃったな。よー似てるから間違えたわ!」

おじぃは豪快に笑い飛ばします。
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「発音違うよ・・」


ちょっと解説すると、このおじぃ、地球誕生以来、
ずっと二酸化炭素として過ごしてきた、
つまり、他の物質に変わったことのない、
生粋の二酸化炭素なんです。

おじぃが店にやってくると、みんなが周りに集まってきます。
二酸化炭素君のいつもの席もすでに埋まっています。
みんなおじぃの話を聞きたくて仕方ないのです。

「おじぃ、今日は何の話をしてくれるんだい?」

「そうさなあ、おめえさん、何が聞きたいんだ? 言って見なよ」

おじぃはそういいながら、いろんな話をしてくれます。
海底でふてくされてる重金属たち、成層圏近くで出会ったヘリウムの軽さ。
ミドリムシに食べられそうになったあの日。
そして初恋のこと・・・。

「なんてったって、わしの人生の中でも特別おもしろかったのは、
コーラになったあの日だな。」

おじぃは、遠い目をして話し始めました。

「わしはこっそり工場に紛れ込んでやったんだが、
みんな集められて、精製されて、
そりゃあぎっちぎちの炭酸ガス軍団がつくられるんじゃ。
まじめなやつ、やくざなやつ、できたばかりとか。
いろんなやつが混ざってたよ・・。
それから強引に、コーラの中に突っ込まれて、瓶詰めにされて。
ん? ああ、当時は瓶じゃった。
思い出すのお・・・
あんときゃ、三日三晩、みんなで話し合ったもんじゃ。
ゲップになる前に逃げだそうぜってな。
でもよ、結局みんな捕まっちまってよ、まとめてゲップになっちまったよ。」

聞いたこともない冒険話に、みんな目を丸めて聞いています。

「そういやぁ、そのとき、『俺は逃げ切ってみせるぜ』って
大見得切ってた坂本村の酸太郎って、ちんけなやつがいたんだけど、
あいつなんざ、出る口間違えちまったらしくてよ、
『俺はくさくないよ、くさくないよ』って
肩を落として3年ばかり泣いて暮らしてたよ。」

みんな大笑いです。

「おお、いけねえ。こんな時間だ。そろそろ出かけなくっちゃな」

「おじぃ、今度はどこに行くんだい?」

「そうさな、今度那須からあとなんとかって、定期船が出るらしくてよ(注)、
そいつで空の向こうにでも行ってみようかと思ってるよ」

おじぃのいうことは、いつも壮大で、夢のような、
まるで物語の世界の話のようで、嘘か本当かも誰にもわからないのですが、
きっとまた、楽しい話をみやげに、この店に帰ってくるに違いありません。

「じゃあ、みんな、元気でな」


おじぃはそういって帰って行きました。





注)NASAからアトランティスといいたいらしい。
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# by mokuiku | 2011-05-07 16:35 | 二酸化炭素君

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